イジワルな君の一途で不器用な恋心
当時を振り返る琳子。
いつものように親と一緒にゴリラエリアに行ったら、新しい看板が立っていて。飼育員さんに尋ねてみたら、『ツヨシくんの彼女候補』だと。
まだ候補の段階だったので決まったわけではなかったのだが、仲睦まじく遊んでいる姿を見てしまい、その場で泣き崩れたらしい。
初恋が早いだけあってマセてるな……。
少し思い込みが激しいところもこの頃からだったのか……。
「ちょっと、聞いてる?」
「聞いてるよ。良かったな、通りかかったのが俺で」
意地悪っぽく答えると、「う、うるさい、バカ」と狼狽えてるのが丸わかりな返答が。
2年もの間、毎月純粋な愛を受け取ったのにも関わらず、何の知らせもなく悲しませた。ましてや1年で1番めでたい日に。
かなり許しがたいけど──。
「あの時のハンカチ、まだ家にあるぞ」
「えええ⁉ 今も使ってるの?」
「いや。掃除する度に見返して、めちゃくちゃ泣いてたなーって懐かしんでる」
「はぁ⁉ やだやだ、恥ずかしいじゃない! さっさと捨てなさいよ!」
「ええー、どうしよっかな〜」
琳子に出会わせてくれてありがとう。
ドラミングしているツヨシを思い浮かべて、心から感謝したのだった。