イジワルな君の一途で不器用な恋心
嫉妬にまみれた狼さん
日が短くなった秋、寒さに凍えた冬が過ぎ、新たな門出を迎える春がやってきた。
「どう? できたてホヤホヤのお味は」
「最っ高。毎日食いたい」
「ほんと⁉ お世辞じゃなくて?」
「あぁ。正直甘い味はあんま得意じゃねーけど、これは控えめだから。だし巻きと交互で食いてーな」
「えへへ、そう? ありがとう。学校始まったら作ろうか?」
「マジ? いいの?」
「うん! テスト期間以外なら」
答えた瞬間、目の前に座る彼の口角が上がった。
卵焼きを頬張ったまま、ふふふっと嬉しそうに含み笑いを漏らしている。
ダイニングテーブルの上には卵焼きをはじめ、鶏の唐揚げ、みそ汁、ミートソーススパゲティ、チャーハンと、和洋中の料理がズラリ。
今日は3月最終日。と同時に、雷夜の誕生日。
『手料理が食べたい』というリクエストにお応えして、お祝いパーティーを開いたのだ。
「おじさんとおばさん、何時ぐらいに帰るって?」
「6時頃。マグロとサーモンづくしのお寿司買ってくるってさ」
「えええ⁉ いいの⁉ そんな贅沢品を私が頂いても……」
「いいんだよ。いつもお世話になってるお礼だって言ってたから。ちょっと早い誕生日プレゼントだと思ってありがたく受け取れ」