イジワルな君の一途で不器用な恋心

命令口調で述べた彼が、箸で摘んだ卵焼きを私の口元に近づけた。


いきなりあーんかい。
嬉しいけど、もう少し雰囲気作ろうよ。初めてなんだからさ。

っていうか、それ私が作ったんだけどな。


と内心ツッコミを入れつつも、卵焼きを丸ごと口の中へ。

うむ、程よい甘さ。我ながら上出来だ。


噛み砕いた卵焼きを食道に流し込み、フォークにスパゲティをくるくると巻きつける。


年度末の今日は休日。

なので、最初は雷夜のご両親と一緒に祝う予定だった。


のだけど、『私達がいるとお邪魔虫だから』と断られちゃって。私が到着したタイミングで入れ替わるように車に乗って行ってしまった。


……勘づかれちゃったのかな。


『お家デート楽しんでね』って、去り際におばさんからイタズラっぽい笑顔で囁かれたんだよね。それはそれはもう、ヘビ扱いしてくる雷夜と瓜二つの表情で。


隠すつもりは全然ない。元々はお昼ご飯を食べる時に伝えようと思っていた。

なのに、こんな早い段階で気づかれてしまうなんて……。



「ねぇ、おばさん達、サプライズで祝ってこないよね?」
< 302 / 314 >

この作品をシェア

pagetop