イジワルな君の一途で不器用な恋心
耳を立てないと聞き取れないくらいの小さな返事。
笑っているのがバレないようササッとリビングに移動し、ソファーに腰かけて3枚撮ってあげた。
「──んじゃ、そのへんテキトーに座っといて」
「はーい」
コーヒーを準備しに行った雷夜を見送り、ドアを閉めて奥へ歩を進めた。
ベッドとローテーブルの間に腰を下ろし、部屋全体をぐるりと見渡す。
卓上カレンダーとペンケース、未開封のノートセットとファイルが置かれた勉強机。
犬の置物、図鑑、写真集、漫画が並ぶ本棚。
そして──後ろで一際存在感を放つ、セミダブルサイズのベッド。
枕元には、数時間前まで着ていたであろう、部屋着らしき黒いパーカーが雑に畳まれていて……。
トクントクントクンと速くなり始めた心臓を深呼吸で落ち着かせる。
誘われた時点で、覚悟はしていた。
どんなやつ着たら喜んでくれるかなぁって、服から靴下、下着まで、1週間かけて選んだ。
髪の毛、肌、爪のケアもそう。
触れ合うなら少しでも綺麗なほうがいいよねって、昨日はお風呂で2時間近くかけて洗って保湿した。
今朝も、身だしなみを確認してからインターホンを押して。
料理中も、雷夜が幸せそうに食べる姿だけを想像した。