イジワルな君の一途で不器用な恋心

迫りくる鋭い眼光から逃げようと薄い胸板を押し返した瞬間、首元から芳醇な香りがふわっと漂ってきた。



「あっ、コーヒーっ」

「いいよ、まだ熱いから」



話を止めるな目を逸らすな。

そう言わんばかりに両腕に力を込めた雷夜と視線がぶつかる。



「今日は俺のことだけ考えてて」



独占欲丸出しなセリフ。

告白された時と同じ、揺らぐことのない真っ直ぐな目を向けている。


だけど、瞳は小刻みに揺れており、理性を必死に抑えているのが読み取れた。


そりゃあそうだ。
せっかく2人きりになれたのに、一緒にご飯だけ食べて終わり。

……なんて、そんなの私だって寂しすぎる。


だから──。



「わかった」



両肩に手を置いて、そっと、一瞬だけ、触れるだけのキスをした。



「ツヨシくんのことは考えないで、雷夜のことだけ考えるね」

「お前なぁ……」



いつもの仕返しのつもりでイタズラっぽく笑ってみせると、ストッパーが切れたのか、マットレスの上に押し倒されて。



「どこでそんな煽り方覚えたんだよ」



甘い熱とコーヒーの苦みを含んだ唇が、私の下唇に優しく噛みついた。



END
< 313 / 314 >

この作品をシェア

pagetop