イジワルな君の一途で不器用な恋心
──プシュー。
駅に停車し、制服やスーツ姿の人達が乗ってきた。
新年度最初の月だからか、先月に比べて乗客が多い。
「わりぃ、ちょっと詰めるぞ」
「う、うんっ」
乗客の波に押されるように端に追いやられた。距離が縮まり、気まずくなって少しうつむく。
私の頭の横で手をついているこのシチュエーションは、まさに壁ドン。いや、窓についてるから窓ドンかな? 別にどっちでもいいんだけど。
電車が揺れて、目の前から心地よい香りがふわっと漂ってきた。
この香りは、多分……。
「……シトラスか」
頭の上でボソッと呟いた声が聞こえた。
「なんか……緊張するな」
一瞬空耳かと思ったけど、やはり雷夜の声だった。
なに? 心の声が漏れてるの?
雷夜にしては珍しい気もするけど、新学期初日だからドキドキしてるの?
「朝っぱらから壁ドンって……心臓破裂しそうだっての」
聞こえていないふりをするも、独り言は止まらず。
壁ドン? 心臓破裂?
もしかして……緊張してるって、私に対して⁉