イジワルな君の一途で不器用な恋心

──プシュー。



駅に停車し、制服やスーツ姿の人達が乗ってきた。

新年度最初の月だからか、先月に比べて乗客が多い。



「わりぃ、ちょっと詰めるぞ」

「う、うんっ」



乗客の波に押されるように端に追いやられた。距離が縮まり、気まずくなって少しうつむく。


私の頭の横で手をついているこのシチュエーションは、まさに壁ドン。いや、窓についてるから窓ドンかな? 別にどっちでもいいんだけど。


電車が揺れて、目の前から心地よい香りがふわっと漂ってきた。

この香りは、多分……。



「……シトラスか」



頭の上でボソッと呟いた声が聞こえた。



「なんか……緊張するな」



一瞬空耳かと思ったけど、やはり雷夜の声だった。


なに? 心の声が漏れてるの?
雷夜にしては珍しい気もするけど、新学期初日だからドキドキしてるの?



「朝っぱらから壁ドンって……心臓破裂しそうだっての」



聞こえていないふりをするも、独り言は止まらず。


壁ドン? 心臓破裂?
もしかして……緊張してるって、私に対して⁉
< 4 / 314 >

この作品をシェア

pagetop