イジワルな君の一途で不器用な恋心
速くなる鼓動を抑えながら、電車が駅に停まったタイミングで顔を上げる。
「ねぇ、さっきからうるさい。何言ってるの?」
「ん? お前の心の声を読んでた」
尋ねると、そこには乗車前に見たイタズラっぽい笑顔が。
カーッと顔が熱くなるのを感じ、やつあたりするように彼のお腹をグーパンチした。
「いってぇ……朝から何しやがる」
「それはこっちのセリフよ!」
小声で言い放ち、痛みに耐える彼を睨む。
まったく、また意地の悪いことを。
的外れならまだしも、結構図星だから悔しい……。
ドアが開いて乗客がなだれ込むと、車内はぎゅうぎゅう詰めに。
「おい、ちょっと外向け」
「いや、無理、だよ……」
後ろにある手すりを握り、顔を横に向ける。
どうして無理なのかって?
それは、圧に耐えきれなくなった雷夜が肘をついてしまって身動きが取れないから。
つまり……。
「なに赤くなってんだよ。ドキドキしてんのか?」
「違うっ! 暑いからっ!」