イジワルな君の一途で不器用な恋心
もう、また勝手に読んで……っ。
暑いのは日光が当たってるだけ。
決して、肘ドンにドキドキしてるとか、全身が密着しているからではない。
そう何度も自分に言い聞かせるけれど……。
「ちょっ、大丈夫か?」
「っ、大丈夫……」
車内が揺れる度に香りがふわりと舞い、鼻腔をくすぐる。
この清潔感溢れる香りは、シトラスではなく石鹸。
むしろシトラスは……今朝、私がつけてきた香り。
「……変態雷夜っ」
「バカっ、なに言ってんだ。やめろ、こんな時に。勘違いされるだろ」
匂いを嗅がれていたことに気づいて、ボソッと言い返した。……まぁ、私も人のこと言えないけど。
学校の最寄り駅まであと二駅。
どうか、これ以上人が乗ってきませんように。
電車に揺られながら、叶わない願いを何度も心の中で必死に呟いた。
◇
数分後、降車する駅に到着した。
学校に足を運び、昇降口に貼られた張り紙でクラスと教室を確認。他クラスの雷夜と別れて3年2組の教室へ。