イジワルな君の一途で不器用な恋心
と、強気で腕に力を込めるも……全然動かない。
身をよじってみても、反動をつけてみても。
まるで手首だけが壁に縫いつけられているような感覚で、微動だにしない。
「あれ? 手こずってんの? ヒョロヒョロ相手に?」
「っ、なわけないでしょ」
「じゃあその顔は? またドキドキしてるとか?」
「それも違うっ」
顔を覗き込まれて熱が一箇所に集中。意地の悪い表情から視線を逸らす。
いつかの満員電車に乗った時と同じシチュエーション。耐性はついてるはずなのに。
首元から香ってきた石鹸の匂いが鼻腔をくすぐって……。
「っ……調子に乗んな! この泣き虫ピンシャーが!」
勢いよく膝を持ち上げ、彼の下腹を攻撃した。
「おま……っ、膝は卑怯だろ……っ」
「力で縛りつけてきたあんたがそれ言う?」