イジワルな君の一途で不器用な恋心
目の前で電車が停まった。聞こえていないふりをして乗り込む。
「おい、聞いてるんだけど」
「は? 何を」
「ツヨシって誰だよって聞いてんの。育成ボックスの中に、進化前のライヤに交じって、ツヨシって名前のやつが何体もいたんだけど」
確実に耳に届いた単語。サーッと血の気が引く。
ねぇ、なんで……? 育成前だよ?
まだ何1つ手つけてないのに、なんで見る必要があるの?
負けて悔しかったから? どうしても私に勝ちたいがために? だったらライヤ軍だけ覗けば充分じゃない。
「ツヨシって誰だよ」
「別に、あんたには関係ないでしょ」
頑なにノーコメントを貫く。
……言えない。
友人の中で1番気心の知れた仲でも、特に雷夜には口が裂けても言えない。
だってツヨシくんは──。
『私のほうがずっと前から好きだったのに……っ』
雷夜と出会うきっかけになった、初恋の男の子なんだもん……!