駆け出しの恋
first
雨が降る夜でした。
駅は、走り出す電車と人波に満ちてる。
宛もなく終電を待つ俺は、独り煙草を加え、待合室を広く感じる。
『未成年の喫煙は禁止よ』
不意に言われてドキッと見上げる。
『貴方高校生でしょ?』
ロングヘアーの綺麗な人が居た。
『...オバサン誰?』
『通りすがりの歩行者』
『へぇ.....』
俺は煙草の煙をかける。
『隣。いいかしら?』
『.......』
俺は返事をする気もなく。
その人は隣に座った。
沈黙が流れる。
『.....私、隼美(ハヤミ)。貴方は?』
『宗哉(トキヤ)...』
『宗哉君は、好きでもない人と結婚って出来る?』
は?
この人何言ってるんだろ。
ちらっと彼女を見る。
その手は震えてて、今にも崩れそうだ。
でも
脆い姿が凄く美しく見えて、俺を捕らえた。
『私ね。今日親の決めた人とお付き合いする事になったの.....』
『......』
待合室は静かだ。
俺と彼女しかいない。
『でも、逃げて来ちゃった。』
『........俺だって逃げるよ。』
俺はそれだけ言うと煙草を消して、立ち上がった。
『またね』
寂し気に彼女は呟く。
またなんてない。
俺は待合室を出た。