駆け出しの恋
次の日も雨でした。
昨日の人は今日は居ない。
待合室は広い。
また煙草に火を着ける。
待合室のドアが開いた。
『また居た。』
『....今日は何?また口うるさく注意する気?』
『今日は、口数多いのね。』
『......』
俺は黙る。
彼女は座る。
『....会いに来てみたの。』
『...』
『貴方に。』
煙草の灰が落ちた。
『........』
『これ連絡先だから。』
名刺を俺に差し出す。
受け取ろうとしないと、彼女は俺の胸ポケットに其を入れた。
『...何がしたいの?』
『宗哉君に会いたいだけよ。』
彼女はうつ向く。
泣いてるのかと思った。
俺は思わず彼女の顔を手で掴み、自分に向ける。
『....何?』
『何泣いてんの?』
濡れる瞳が蛍光灯に反射して綺麗に見えた。
この人は綺麗だ。
長い黒髪も。白い肌も、整った鼻大きな瞳。
赤く塗られた唇。
染まる頬の色。
『泣くなら、ちゃんと泣きなよ。....』
涙が頬を伝う。
『誰も気付いてくれないよ?』
彼女の顔が俺の肩に落ちた。
『.....』
俺は抱き締めない。
ただ彼女は泣いてた。
煙草を口へ持ち、煙を吐く。