駆け出しの恋
暫くして彼女は俺に言った。
『...ありがとう。』
『.......』
ただ黙る俺。
この人は、俺のじゃない。
『でも...抱きしめて欲しかった。』
『....人のモノは、取らない主義だから』
『そぉ....』
彼女は、立ち去ろうとドアに手をかける。
『悲しまない程度にしなよ。』
『え?』
彼女は振り返る。
『あんた綺麗だから。脆いから。....優しく抱きしめてくれる人を選びなよ...』
『ありがとう。そうするわ。....』
『明日は、俺。ここ居ないから。』
遠回しに突き放す。
『サヨナラ』
彼女はドアの向こうに消えた。
『...』
抱きしめてしまったら、離せない気がした。
昨日あった時から、ずっと考えてた。
俺はまた過ちを犯す。
『わりいな。』
人を愛しちゃ駄目なんだ。
もう、誰も愛せないんだ。
あの人がどれだけ俺から離れなくても。
俺は......。