俺はきっと、この出会いを恋と呼ぶのだろう。
「ちょいちょいちょい」

そのまま作業を続ける俺に、さらにミキが食い下がってきた。

「なんだよ」

俺は、少しめんどくさそうに答えた。

「そう言う時はさ?ミキはどうなの?とか聞くもんじゃない?」

ミキは、ぐいぐい聞いてきた。
これは、確実に何か話したい兆候だった。

「はいはい。ミキは彼氏できたの?」

俺は、作業をしながら、なんとなく質問をしてあげた。

「聞きたい?聞きたいよね?」

待ってましたと言わんばかりに、ミキは勢いよく話し始めた。
工業高校に通うミキは、周りに男友達も多い。

最近になって、隣のクラスの男子と良い感じになっているそうだ。
まだ付き合ってはいないが、デートに誘われてるらしい。

「つまり、そのデートの日に休みたいから、一人で大変だけどお願いって事な?」

ミキは、満面の笑みで俺を見ている。

「まあ俺は良いけどさ、それは店長に言えよ」

ミキは、休みはおまけで、実際はその彼氏候補の事をとにかく話したかったようだ。
普段も、いつも元気なミキだか、今日のミキはいつも以上に浮かれて見えた。

元気の良い女の子から、恋する乙女に替わっている。
俺に、何度もどう思う?と聞いてくるが、俺にはそれに応える経験も立場もない。
「でも、シオン君は気になる人とか本当にいないの?」

一通り話終わると、話題はもう一度俺の事に変わった。

「いねえよ。そんなの」

俺は、少し呆れたようにミキに返した。
そのまま、なんとなく作業をしていたが、ふと頭の中に昼休みの事が思い出された。

作業する手が、思わず止まってしまっっていた。
あの日からいつもそうだ。

ふとした時に、脳裏に浮かぶ光景。
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