俺はきっと、この出会いを恋と呼ぶのだろう。
降りる駅に近づくと、一気に人が増えてくる。
動けないほどではないが、正面の窓もよく見えなくなる。

そうなると、腕を組んで下を向く。
これがいつものルーティンだ。

〜太田駅、次は太田駅〜

唯一の乗り換えの駅。
この太田駅は、周辺の高校に通う学生や乗り換えの学生が集合する駅でもある。

俺は、この駅で一度だけ乗り換えをする。
階段を登って、乗り換えのホームに向かう。

「よおシオン、おはよ。お前は今日も暗い顔をしてるねえ」

このタイミングで、反対から通ってくる同じクラスのアユムが声をかけてくる。
お調子者で、クラスでいつもふざけているような奴だ。

俺はそんなに騒ぐ方でもないし、どちらかというと静かにしていたいのだけれど、なぜかアユムは入学当初から俺に絡んでくる。
そして、朝は何よりテンションが低いのに、毎朝アユムは俺の肩を掴んで挨拶をしてくるのだ。

「アユムは朝から変わらんねえ」

毎朝こんな調子だ。
アユムが次から次へと話題を振って、俺が返事をする。

合流してから、担任が入ってくるまで続いて、席も俺の前の席だ。

「お前ら座れえ」

担任が、いつものように日誌を手でパンパン叩きながら入ってきた。
学校の朝が、いつものように始まる。

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