俺はきっと、この出会いを恋と呼ぶのだろう。
「シオン君、入館証ほれ」

走り抜けようとした俺に、守衛さんが入館証を差し出していた。

「すみません。あざあっす」

入館証を受け取って、俺は後ろ向きに手を振りながらバイト先に向かった。

「おはようございます」

軽く会釈して、奥にあるエプロンを出して準備した。

「シオン君、裏にあるお米運んでもらってもいい?」

ベテランパートの内藤さんだ。

「あっはい。分りました」

腰のエプロンを縛ると、俺はそのままバックヤードの倉庫に向かった。
魚屋の隣の扉を開けると、倉庫は目の前だ。

倉庫の扉に、俺が手をかけると、横から声をかけられた。

「シオン、今日は午後からか?」

ショッピングモールの中にある、鰻屋の店長であるミノルさんだった。
20代前半のミノルさんは、モールの中の若い子達の兄貴的存在だ。

「土日はいつも午後からっすよ」

「そうかそうか。頑張れよう」

手を振りながら、ミノルさんは自分の店の方に向かっていた。
俺は、10キロと5キロの米を台車に乗せて、店舗に戻った。

レジもやるが、基本的には俺の仕事は陳列がメインになる。
田舎のモールだし、買いに来る人は知り合いが多い。
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