初恋を拗らせた幼馴染が婚姻届を持って溺甘淫らに求愛にやって来ました
「ニコ」
母に声を掛けられ、私は縦に首を振ると、蒼の手を取った。
「歩ける? 」
「うん……。 ……すみません、おばさん…… 」
「心配しないで、私に任せて」
母はニッコリと微笑んで、彼から鍵を借りて玄関を開けた。
「可奈さん、私よ、真奈美よ」
母は中の女性に声を掛け、手慣れたように、宥め落ち着かせる。
ドアが閉まり、二人が姿を消すまで、蒼と私は息を殺して気配を消す。
暫く様子を伺ってから、蒼と二人で我が家へ向かう。
幼い頃から満足に食事を与えられず、薄汚れて痩せこけていた蒼を何年も見てきた。
心の壊れたお母さんを、バイト三昧で一人支えている。
いつも眉毛をハの字にして、歯を食い縛る蒼の顔が、大人になった今でも忘れられない……。