素直になれないツンデレ王女はこわもて護衛騎士に恋をする。年の差20歳はダメですか?
1章 ツンデレ王女と護衛騎士
私の大好きな人
「いつ見ても、シリルはカッコイイわね」
さわやかな風が春の訪れを告げている。
庭には色とりどりの花が咲き乱れその横では演習場で騎士たちが、訓練を行っていた。
汗も滴るではないが、その勇ましい姿にはわざわざ見学を申し込む令嬢たちまでいるほどだ。
その中にひと際大きく一番手前で指導に当たっている騎士が、私わたくしのお目当てであるシリル。
今年38歳になる、第一騎士団の騎士団長様だ。
大きな手に黒い髪、灰色の瞳はまるで夜明けの宝石のよう。
いくら見ていても飽きないのですが王女という立場上、ジロジロ見るわけにもいかず散歩のふりをして観察する。
そう。あくまで散歩のついでに立ち寄ったというコトが大事。
だって彼は知らないから。私の思いなんて、何一つとして。
ああ、それにしてもいつ見てもシリルは素敵だわ。
「ルチア様~、心の声が駄々洩れですよ」
「え? 出ていたかしら……。で、でも、本当のことだから仕方ないでしょう」
「ははははは、ソウデスネ、ルチア様」
「もう、メイ、何ですの、その片言は。シリルは誰よりも強く、カッコイイではありませんの」
「強いのは認めますよー? あの方に敵う人なんてこの国ではいませんし。でも、カッコイイっていうのは……。シリル様って、まるで熊みたいじゃないですか。それにあの頬の大きな傷が、とても怖そうに見えますし」