素直になれないツンデレ王女はこわもて護衛騎士に恋をする。年の差20歳はダメですか?
そう言って笑うシリルの顔が、どこか悲しげに思える。
きっとそう思えるのは、私が悲しいからね。
シリルは護衛騎士としてただ忠実に私を守るだけ。
名前すら呼んでもらえず、私がいくら好きだとアピールしたところで、こうやって娘だと線を引く。
ずっと分かっていたことだ。
彼は私の思いを決して受け入れようとはしない。
でもそれでもと、いつかはとずっと願ってきた。
諦めるには、まだ早いと思うから。
この廊下がもう少し長ければいいのにと思う反面、縮まることのない距離に風が吹き抜けていく。
「部屋ではどうか暖かくお過ごしください、王女殿下」
今日も大した会話も、何かが進むこともなく部屋へとたどり着いてしまった。
「言われなくても分かってるわ」
「あ……」
何かに気付いたかのように、シリルの手が私の顔の方へ伸びてくる。
何が起きたのか分からず、固まっていると彼の手が髪に触れた。
ただそれだけで、心臓の音が外まで聞こえてしまうのではないかと思うくらいに大きな音を立てる。