素直になれないツンデレ王女はこわもて護衛騎士に恋をする。年の差20歳はダメですか?
メイの言葉に、涙がまた溢れた。
悲しいのか、嬉しいのか……。
今の私には分からなかった。
ただぼんやりした頭が、ほんの少し動き出した気がした。
それでも、体が十分に動くことは叶わなかった。
心がただ痛くて重いというだけで、何も食べる気が起きないのだ。
メイや医者に勧められるままに、何とか好きなものを一口だけ食べるという日々が過ぎていった。
ドレスのサイズが合わなくなる頃には、シリルが発つ日まで数日となっていた。
もちろん、あれから一度もシリルとは顔を合わせてはいない。
そんな日の昼下がり、父が部屋へ様子を見に来た。
その手には見慣れない黒い薄い本のようなものを手にしている。
「お父様」
「かわいそうな、わたしのルチア。すっかり痩せてしまって……」
ベッドの横に腰かけると、父は私の頬に触れた。
大きくて温かい、私の大好きな手だ。
「ルチアはまだ、わたしのようなたくましく大きな手の人が好きかい?」
胸の痛みがズキズキと強くなる。
だけど、どうしてもそれだけは変わらなかった。
その思いだけは。
私は父の言葉に、ただこくりと頷いた。