素直になれないツンデレ王女はこわもて護衛騎士に恋をする。年の差20歳はダメですか?

「……」

「そうかい。これはね、お前の兄が持ってきてくれた縁談だよ」


 父は持っていた物を私に手渡す。

 どうやら先ほどの本のような物は、お見合いの釣り書きだったようだ。


「歳はちょうど今年60だという伯爵でね、後妻を探していた方なんだ。とてもお優しい方でね、死ぬまでただ側にいてくれればいいと。そして自分の死んだあとは、屋敷で静かに暮らしてくれればいいとおっしゃってるんだ。ルチアの療養も兼ねててと思ってね」

「……お受け……いたします」


 父は私の手を強く握る。その手から父の思いも伝わるような気がした。


 父の言うように後妻ならば、ただ静かに暮らせるだろう。

 その方にただ寄り添って生きていけば、この胸の痛みもいつか消えるかもしれない。

 兄が持ってきた縁談だ。

 中を見る必要もなく、私はただ二つ返事をした。

 そうこれでいい。

 むしろ良かった方だと言えるだろう。

 あの人への想いが捨てられないのならば、どこかの若い貴族の元へと嫁ぐよりずっと幸せなだ。

 想いを捨てなくてもいいと、言ってもらえているのだから。

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