素直になれないツンデレ王女はこわもて護衛騎士に恋をする。年の差20歳はダメですか?

 シリルはただ茫然と、それ以上の言葉が出てこなかった。受け取った手紙に目をやる。


『ごめんなさい』


 震えるような小さな字で、手紙にはそれだけ書かれていた。

 そしてあの日渡した黄色い花が、張り付けてあった。

 これは何に対する謝罪なのだろう。

 あの時、大嫌いと言ったことになのか、それとも……。

 シリルも本当に謝るべきは誰かなど、ずっと分かっていた。

 そして自分の気持ちも全て。

 ただそれでも、そこに蓋をすれば、自分さえいなくなれば、彼女は幸せになれると心から思っていたのだ。

 そう、こんな事態になるまでは。


「では、これにて失礼いたします」


 ざわざわとなる騎士たちを気にすることなく、メイは歩き出した。


「待ってくれ。俺が行く」

「行く? どこへ行くというのですか。今更行って、何になるというのです」


 振り返ったメイは怒りながら、涙を貯めている。

 その涙は、あの日の彼女の涙とかぶった。


「もうこれ以上、自分の気持ちに嘘は付かない。ルチア様を攫いに行く」


 そう言って、シリルは走り出した。そして厩舎に留めてある自馬に乗る。


「すまない、もう戻れないかもしれないが、後を頼む」


 その場にいた他の騎士へ声をかける。

 すると、皆の口からはシリルへの激が飛んだ。
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