素直になれないツンデレ王女はこわもて護衛騎士に恋をする。年の差20歳はダメですか?
「攫ってもよろしいですか?」
「敬語と様付けをを辞めるなら、考えてあげてもいいわ」
「……ルチア、こちらへ」
シリルに抱き抱えられながら、馬に乗せられる。
「とりあえず、俺の家へ向かいます。国王と王太子には、そこから許しを乞う予定です」
そう言いながら、シリルがゆっくりと馬を走り出させた。
「お兄様にお別れをした時に、馬車に乗る前にどうしても欲しいものがある時は、外堀から埋めないとダメだよと、こっそり言われたのよ」
兄はもしかしたら、こうなることも分かっていたのかもしれない。
「外堀ですか?」
「ええ」
「よく分からないのですが、そう言えば輿入れ先はどこだったんですか? 相手にも話を付けに行かないと」
「それは大丈夫じゃないかしら。今から行くわけだし」
「え。どういうことですか?」
全く状況の読み込めないシリルが、声をあげた。
こんな素っとん狂な顔をするシリルは初めて見たかもしれない。
それがなんだかとても楽しい。
「私もさっき馬車の中で、お相手の名前を確認したのよ。私のお相手は、ガルシア辺境伯」
「なっ! まさか、後妻っていうのは」
「シリルが攫いに来てくれなかったら、私はあなたの継母だったということね」
「それは外堀というのか、嫌がらせの域に近い気が……」
「うふふふふ」
あの日見た恐ろしい森の面影はもうない。
シリルの胸に寄り添いながらも、私はちゃんと前を見ることが出来たから。