おんなじがほしい
第一章
第一話
ーーー遠い存在の王子様。
キミに選んでもらえなくても。
キミの「特別」になれなくても。
「ふぅ、あと少し」
高校生の自分にも慣れてきた夏のはじまり。
放課後、1年4組の教室。
私はひとり、箒を手にして掃除をしている。
掃除当番だから。
まぁ、他の掃除当番の人はみんな、帰っちゃったけれど。
机を動かしたり、雑巾がけはしていない。
ただ箒で掃いているだけ。
それでもひとりぼっちの掃除は、案外時間がかかるらしい。
気分をアゲたくて。
ふんふんふーんと、鼻歌を歌う。
そうすることで寂しさがちょっとでも消えてくれると嬉しい。
「……何の歌?」
背中きら聞こえた声に、
「うわあっ!!」
と、大声が出た。
「うるっせ……」
振り返ると両手で耳をふさいでいる、クラスの人気者がいた。
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