おんなじがほしい
「あ、そっか。ごめん、田畑さん。またな」
「あの、はい。また」
ふたりは飲み物のコーナーに移動した。
「つーか、これからテストとか鬼じゃね?」
「塾って結構テスト多いよなー」
ふたりはわりとボリュームのある声で話しているので、私がいるガムとあめのコーナーにも会話が聞こえてきた。
(塾に行っているんだ、西原くん)
どこの塾だろう?
ふとそう思って、首を振る。
おんなじ塾に通えたら、なんて思ってしまうけれど。
さすがにそれはやり過ぎかも。
お金もかかるし。
西原くんに気持ち悪がられたら、ショックで死ねる。
(だからガムでおんなじがほしいのに)
「そういえば西原、ガムはいいいの?」
西原くんの友達が聞いた。
「ん?」
「お前いっつもガム噛んでるけど、買い足さなくてもいいの?」
(ナイス!)
西原くんの友達、ナイス質問!
私は右手の親指を思わず立てた。