おんなじがほしい
「……田畑、です」
「田畑さん!そうそう、田畑さん!」
女子達はクスクス笑いつつ、口々に「ラッキー」とか、「便利」とか言いながら去って行った。
(ま、いっか)
特に用事もないし。
女子達の背中を見つめつつ、またイヤホンを耳元に持って行くと。
「嫌じゃないの?」
と、西原くんの声がした。
振り返るといつの間にか私の席の後ろに、西原くんが立っている。
驚きすぎてイヤホンを落としそうになった。
「オレから断ってやろうか?」
西原くんがニイッと笑う。
私は首を振って、
「大丈夫です」
と、言った。
すると西原くんは、
「ふーん。あっそー」
と、口をもぐもぐと動かす。
(あ……、今、ガム噛んでるんだ)
手に入らない、私のほしいもの。
そう思うと気持ちがしゅるしゅるとしぼんでいく。
「じゃあ、放課後は集合だな」
西原くんはそう言って、自分の席へ移動する。
(え?)
集合って?
どういうこと?