おんなじがほしい
私はさっき待っている間に手洗いは済ませておいたので、
「わかりました」
と、西原くんの背中に返事をした。
すぐに教室に帰ってきた西原くんは、
「お待たせ」
と、私の席までやってきた。
「本当にガムでいいの?」
西原くんの質問に力強く頷く。
「じゃあ、手ェ出して」
そう言って西原くんは制服のシャツの胸ポケットから、薄い1枚のガムを取り出した。
思わずごくりとのどが鳴る。
(ついに、ついに……!)
遠慮がちに伸ばした右手を、西原くんの左手がそっと掴んだ。
優しくて、ほんのり温かい西原くんの左手。
「はい。掃除、お疲れ様でした」
私の右手に西原くんの右手が重なった。
思わず顔が熱くなってくる。
戸惑い半分。
ときめき半分。
右手にかすかな重みを感じて。
西原くんの両手が私の右手から離れていく。
「あ……」