おんなじがほしい
「は?」
西原くんは目を丸くして、それから「ぷはっ」と噴き出した。
「あはっ、あははは!何それ、普通に覚えてるっつーの」
「え、あ、ありがとうございます」
笑い涙を片手で拭いながら、
「何のお礼だよ」
と言いつつ、西原くんは教室のすみっこにある掃除用具入れの前まで移動した。
中から箒を取り出している。
「手伝うよ。ふたりでしたほうが早く終わるし」
「でも、申し訳ないです」
「いいじゃん。オレも女の子ひとりに掃除させて帰るなんて、申し訳ないし。掃除を手伝うのはオレのためでもあるから」
そう言って、ニイッと口角を上げた西原くんは。
いたずらっ子の少年のような。
でもふんわりやらかい天使のような。
心臓をわし掴みにされるような表情で。
(あぁ、王子様だ)
そう思ったら。
さらりと私のことを、「女の子」なんて言ってくれたことを思い出して。
頬がみるみるうちに熱を持っていく。