おんなじがほしい
『好きな人の好きなところ、自分だけが知っていたい』
西原くんの言葉を頭の中で再生する。
(……ちょっとわかるかも)
いいな。
そういうところも好きだなぁ。
いいな。
西原くんに想ってもらえる人は。
きっととっても大事にされるんだろうな。
(うらやましい)
そこまで考えていたら。
急に寂しさが心のすみっこからヒョコッと顔を出した。
私もほしい。
何か、西原くんと共通のものや、共有できるもの。
だって。
西原くんに想ってもらえることなんか、この先あるとは思えない。
でも私だって。
何か、ほしい。
西原くんとおんなじ何かを。
授業開始の時間になった。
「席に着きなさーい」
先生が黒板の前に立ち、
「西原くんは何か食べているの?口が動いているけれど」
と、眉間にシワを寄せた。
素直に包み紙を口元に当てて、
「ガム食べてましたー」
と、明るい口調で西原くんが言う。