傷つけて、もっと求めて【完】
優しい彼女



 こんな彼女だけど生まれた時からではない。

 今から俺の話をしよう。
 俺は高校には行っていない。もし行っていたら3年になる年だ。1年で辞めた。母親はいない。俺が小学生の時に病気で死んだ。父親は昔気質の人間で仕事人間だから、遊んだ記憶も笑い合った記憶もない。だから俺が高校を辞めたことも知らないだろう。

 家には帰らず深夜徘徊を極めると、不良に絡まれて面倒だったので、不良と同じ格好をして絡まれないようにした。一度ヤンキーというものに憧れを抱いたが喧嘩をしたことがなかったので諦めた。俺は不良の格好をしたただのニートになった。


 高校を辞めた理由は明確だ。同級生と話していて「お前、いつも家に誰もいないの?いいな〜」と言われたから。

 そんなことで?と思うかもしれないが、俺にとってはそれで十分だった。いいな〜と言われたことがなぜか嫌だった。全く良くない。お前らは俺の何を知っていると言うのだろうか。
 分かり合えないと言われた気がして、こんな空気を吸いたくなくて逃げた。
 やたら広い家は冷たくて嫌いだったからそれからも逃げた。



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