イケメンを好きになってはイケません⁈

「ごめん、急に用事を思い出して。じゃあ、また明日」
　と、むちゃくちゃ不自然に言い訳をしてから、カバンをぎゅっと胸に抱えると、唐突に地下鉄の入り口に向かってダッシュした。

「えっ？　ちょっと、杉本さん、どうしたの」

　さすがにわたしのこの突飛すぎる行動は予測できなかったらしい。

　その隙に、わたしは他の通勤客に怪訝な顔をされながらもエスカレーターを駆けおり、改札を抜け、閉まりかけていた地下鉄のドアに身体をねじ込んだ。

　動き出した車窓からホームを見ると、目の前でドアが閉まってしまい、バツの悪そうな顔をしている森下くんの姿が目に映った。
　
　ダッシュなんて、何年ぶりだろう。
　まだ胸の動悸が収まらない。

　もっとも、それは走ったからだけではないけど。