イケメンを好きになってはイケません⁈
 レジで会計を済ませ、急いで表に。
 
 探すまでもなく、彼女は本屋の隣の店の前にいた。

 気づかれたら逃げられそうな気がしたので、柱の陰に隠れて様子を伺った。

 杉本さんはシャッターの前に脚立を置いてから、しゃがんで何かを拾い上げ、慎重に手のひらに乗せた。

 よく見えない。何だ? あれ。

 彼女はその手を顔のあたりまでゆっくり持ち上げ、「もう、落っこちちゃだめだからね」と子どもをあやすような声で話しかけた。

 えっ、これがあの杉本さん?
 なんて優しい声を出すんだ。

 オフィスにいるときとは、まったくの別人。

 脚立の上に視線を移すと、そこにあったのはツバメの巣。

 ああ、そうか。
 ひなが巣から落ちたのか……
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