イケメンを好きになってはイケません⁈
 なかなか煮え切らないわたしに、森下くんはキラキラ王子の顔でさらに目を細めて微笑むと
「じゃあ引っ越しの挨拶ってことで。あ、それならおれがご馳走しないとだめですね」

 本当に買ってくれそうな気配だったので、わたしは慌てて言った。

「あ、ありがとう。じゃあ、わたしが買わせてもらう」
「どういたしまして」

 相手に気を遣わせないような気配り。
 こういうことが自然にできるんだよね、この人は。

 店を出てからも、さりげなく歩調を合わせてくれるし。

「何階ですか?」
「あ、5階」 
 レディ・ファーストも板についているし。

 エレベーターの階数表示盤の前に立つ森下くんは5を押し、それから9を押した。
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