イケメンを好きになってはイケません⁈
 楽しげに語らう浴衣カップルもたくさん見かけた。
 最近は女の子だけでなく、男の子も浴衣を着るんだ。

 みんな幸せそう。
 弾けるように笑い、語らう彼らを後目にわたしは反対方向の家路を急ぐ。

 花火会場はマンションから歩いて20分ほどの河川敷。
 建物の陰になって肝心の花火は見えないけれど、音は響いてくる。
 今年も例年どおり、部屋で雰囲気だけ味わおう。
 そう思いながら、家路を急いだ。
 
 マンションに着いたころにはすっかり日も暮れて、すれ違う人の顔がはっきり見えないほど暗くなっていた。

 その暗がりのなか、歩道とマンションを区切っている植え込みで人の動く気配がした。

 何?
 びくっとして、わたしは音がしたほうに顔を向けた。
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