イケメンを好きになってはイケません⁈
「さっき、ここでばったり会ったんだよ。あの人、おれのことを覚えてて。これを〝妹〟に渡しておいてほしいって頼まれた」

 そう言って、紙袋を差しだした。
 母の手作りクッキーを。

 お菓子づくりが趣味の母は、同居している兄に、すぐ余った分をわたしに持っていくようにことづける。

 兄の勤める大学はこのすぐ近くにあるので、ぶつぶつ言いながらも、仕事帰りに持ってきてくれるのだ。

「ねえ、おれが納得できるように訳を話してよ。そんなにおれが嫌いなの? 嘘までついて避けなきゃいけないぐらい」

 彼はまっすぐわたしを見つめてくる。

「お願いだから聞かせて。じゃないとおれ……」

 その瞳にはとても強い光が宿っていた。
 まったく曇りのない、真剣そのものの眼差し。
< 68 / 119 >

この作品をシェア

pagetop