丸いサイコロ
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「──そういえば、コウカ……あの事件に、本当はどうして、居たのかな?」
──と、だから、まつりは、当時の、事情に関わっているかもしれない人物に、聞いてみた。彼女は、そういう人物だった。
とはいえ、今さらなにかが聞けるとも思わなかったが、ほんの戯れだった。殺されそうになった相手への態度とは思えないほど、好意的に見えるが、実際は、自分との力の差から、ある程度安全だと、まつりが認識してのことだ。
本人に自覚はなかったが、悲しみに顔を歪めたまつりを、女性は、驚いたように見た。
彼女は、お屋敷に居たことがある。佳ノ宮まつりはその頃から無感情に見え、だが幼くして知能が飛び抜けて高く、賢く、大人だけでは手が回らなかった雑務を任されていたのを知っている。
あの家系が、一体何を扱っていて、どうして栄えたのかは、彼女にも詳しくわからなかったが、常に、何かの仕事が、あそこで行われていたようだった。
まつりは、膨大な資料や書類から、不明点や、修正点を的確に伝えていた。いつ、どんなに量が増えても、その表情は機械のように変わらなかったし、かける時間もほとんど差がなかった。
──かと思えば、時間が出来てはふらふらと出かけ、その辺のものを解体していたのだ。(人目につかない場所でやるため、一部の人以外、ほとんど知らない情報だ)
生臭さがまるで無いかのように錯覚させるほど、ひたすら無邪気に。まるで「ああ、生きてるなあ、儚いなあ」と確認するようだった。自分自身を映そうとしているようにすら感じていた。
そしてそれはとても、同じ生き物と、彼女には思えていなかったらしい。だから、この反応に、戸惑う。
「……どうして居たの?」
まつりはもう一度聞いた。