丸いサイコロ
(あ……そうだ)
ふと、思い付いたことがあったので、車内で、少女の携帯を借りてメールを打った。まつりも携帯電話は持ち歩くが、理由があって、特定の場所以外、特に外では使わない。
《お願いがあるんだけど》と、内容を書いたものを送ると、すぐに数分で、返信が来た。相手からの恨みが込もっている。まあ、とりあえず、日頃の感謝ではないだろう。
『あなたって、無茶言うわよね。いつもいつもいつもいつもいつもいつもいつも』
「……んー」
(──でも、それをこなしてくれるんだから、やっぱり、そうしてしまうんだよなあ……)
少し考えて、返信する。少女が覗き込んできた。
ここで謝るのは、違うだろう。感謝──なんて、わざわざ書きたくない。
《出来もしない『無謀』と一緒にして言っているわけじゃないから、大丈夫。信じてるよ(^_^)/》
『何がよ! なんなのその挙手……。じゃなくて、そもそも本当に必要なの? 私は万能じゃないわ。最初のは、まだいいけど、その次が……』
《ん? まつりも違うよ。だから、こうして頼っているんだよ。きみだから、出来ると思ってる。ちょっと買収して、きみを助け出せたって、これとは事情が違うからさ、自分だけじゃ足りないんだよ。必要だ、全部》
さっきより、返信に間があった。しばらくして、一行だけの文章が届く。
『なんなの、狡い!!!』
い……
いい返信が浮かばない。
《イカ》
──送信。すぐに返信が来る。
『カニ……やめて、カニ嫌いなの、じんましんが出るの!』
《じゃあ言うなよ……》
かまぼことか、カサゴとかにすれば良いのに。
隣で見ていた少女が、笑っている。笑いを堪えている。夏々都は兄に気を配っていて、あんまりこっちの様子は見えていないらしかった。