丸いサイコロ
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「──もしもし?」
『もしもし。あなたがまつりんに、寝込みを襲われたーって聞いたんだけど。そんなに抵抗しなかったとも聞いたんだけど』
「……あー、デマですよ。それ。どこの情報ですか」
『本人情報』
「……、……あいつ、どういう神経してんですか。なんでわざわざそんなことを。さすがに完全に意味わからない」
『あのこにまともな神経を求めるのは間違いよ』
「そうですね。でもデマなんで、じゃ」
『で、いつのまに、そんなことになったの』
「……しつこいですね」
『教えてよ』
「……あいつ、過去に愛人が10人いるって噂ですよ、しかも覚えてないって」
『私も知ってる。「女の子の方が、可愛い上にあっさり言うこと聞いてくれやすいから、調教のしがいがある」とか、いろいろ問題のある発言もしてたわ……』
「はあ……あいつらしいですね。でも勘弁してください……あ。わかった、たぶん今、こうやってぼくを困らせることが、あいつ流の、本日の遊びなんですね……だからそんなこと」
『事実?』
「──さっきデマって言いました。そんなことより、もう勘弁してください」
『なんか怪しいのよ』
「そんなの聞いてどうなりますか」
『まつりんの愛人リストに名前が増えます』
「やめてくださいお願いします」
『あはははっ。本当に面白いわね。あなたで遊ぶの! 軽いジョークだったんだけど、まさか、わりと怪しい返事が来るなんて、気になってきちゃった。本人に聞いてみよーっと』
「……はあ。よくわかりました。あなたたちが気が合う理由」
『聞かないでくれとは言わないのね』
「どうせ、聞くんでしょう。あいつの言うこと、ほとんど嘘ですよ」
『あら、見分けかたがあるのに──』
「え、マジですか、教えてください!」
……ツー、ツー、ツー。(通話が切れた音)
「……一方的に切りやがった」