溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
美希は少し排他的なだけで,基本,本当は素直で優しい友達。

それを,折角仲良くなれた真理とぎくしゃくさせておくには,私も少し思うところがある。



「あゆなと,心優(みゆ)も落ち込んでるけど」

「3人一緒でも大丈夫。多分ね。お昼,一緒に食べたら?」



使って良いと言われてる施設も,もうすぐ目の前にあった。

んー,お腹すいたなあ。

お母さんの作ってくれたお弁当は,今日1番のお楽しみ。

卵焼き,入ってるかな。

私はあまりの空腹に,胸を踊らせた。



「真理は良い子だから,仲良くして欲しい」



思い出したように,美希が呟く。

それはいつか,部活前に私が伝えた言葉だった。



「なぁにいきなり。ちょっと恥ずかしい」

「ううん,ちょっと思い出して。流石だなって思ったんだよ」



流石って,何が……?

不思議に思って,美希を見る。



「私が挙動不審だったからだと思うんだけど……」

ーさっき,千夏も同じような事言ってたから。

お腹の奥が,ひゅっと悲鳴をあげた。

その言葉が,どんなに私の気持ちを揺らすかなんて,美希は知るはずもない。

から,口を覆いたくなったのを必死に我慢して。

本当は不安に泣きたいのを押し殺して



「そっか」



私は何とか,笑みを張り付けた。

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