溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
真理は何も悪くない。

千夏の優しさも,悪いはずがない。

千夏の……想いだって。

私には関係ないんだ。

だけど,だけど。

どうしよもないからこそ,大嫌いな感情に苛まれる。



「あれ……そう言えば,千夏は?」


美希が思い出したように振り返って,私の心臓は一層大きく1拍鳴った。

最近,真理に対してやたらとおかしな態度を取っていた千夏。

今日も真理と同じ班だからか,ひどく静かで。

私の周りには,一度も飽きず喋っていた森くんや,話しかけてくれる堀さんや美希がいた……

だから。

私は気付かなかった。

いつもなら,気付けば目で追っている千夏が,そこに……

もうずっといなかったこと。

そして,私は唇を強く噛む。

今度こそ,泣きそうで。

だって,だって。

美希の不思議そうな声を聞いて最初に取った行動が。

千夏を探すことでも,美希に言葉を返すことでもなくて……

真理の居場所を,探したことだったから。

ほんとうに……

さいってい。
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