溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。


ううん,この先は,もうこれ以上頑張れないって,なってからにしよう。

まだ頑張れる。

私は,まだ何もしていないから。

千夏が真理を好きになったことなんて,もうずっと前から知ってたことだもん。

今更だよ,今更。

それでも頑張るんだって,決めたじゃん。

伝わりはしなくても,真理にだって"もしもの時は好きにして"なんて,余裕ぶって見せたんだ。

僻んだって諦めようとしたって,全部無駄。

だから,幼馴染みなんてタイトルにしがみついて,せめて偽物の隣は死守しなきゃ。

千夏に言われるまで,私はぜっったいに手放したりしない。

……だって。

卵焼きを好きになったのだって,本当は千夏が遠足の度に喜んでたからだ。

私の全部,千夏で始まってる。

だから,終わらせてくれるのも千夏だけ。

どんな結末になったとしても,私は私だけの物語を生きたい。

最初から運命だと決まっていても,せめて納得出来るように頑張りたい。

最初から決まってたことだから,私の選択は関係ないんだって,自分を慰められるように。

残念だったけど,それでも頑張ったんだって誇れるように。

次にお弁当の機会があったなら,その時は……

こっそり自分で作ってみよう。

私はまた,やっぱりずるい計画を立てた。

でも,ずるくたっていいんだ。

どうせ真理には敵わないのだから。

やりたいようにやろう。

何か違うと思っても,千夏はきっと美味しいと言ってくれる。

千夏の好みも,反応も。

私は全部,知ってるんだから!

もう,弱気にはならない。

どうなったって,絶対に笑ってやる……!


            ー真香sideー end
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