溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
「千夏くんは，友達……」



でも，それだけじゃ無くなった。

噛み締めるように，自分に理解させるように考える。

好きなら，告白する。

告白するなら，つきあう。

恥ずかしい勘違いなら，それでいい。

だけど今まで普通に生きてきた私は，そんな少ない認識しか持っていないから。

千夏くにとって私はもう



「友達じゃ，ない……？」



大きな喪失感，大事な人が1人いなくなる，恐怖。

じゃあ私は，千夏くんとまた笑いたいなら。

なれるのかな，その……千夏くんの，彼女に。

だけど真香さんを思い出した時に，私はそうなりたいと思っている訳じゃないと強く思う。

そうするしかないかもしれないから，今ふと考えてしまっただけで。

私はやっぱり，千夏くんの彼女にはなれない。

そんな，千夏くんただ1人の素敵な存在にはなれない。

その程度のこの気持ちは，やっぱり。

千夏くんの好きとは，違うんだろう。

チクチクと，胸が痛む。

今でも信じられないような出来事だけど，麻痺した頭ではそれも大きな問題じゃない。

千夏くんが，あんな真剣な顔で嘘をつくわけがない。

たとえば勘違いなら，分かるけど。

あんな演技を出来る人だとも，して得する事が無いことも，私は痛い程分かってる。

ーごめんね，千夏くん。

好意を跳ね返すのが，こんなに痛いものだなんて……

告白されたことのない私は，知らなかったよ。

< 135 / 196 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop