溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。









「あっ真理さん!」



施設前,パタパタと私に駆け寄る1つの足音。

顔をあげると,それは水上さんのもの。

初めて名前,呼ばれた……

私が気付いたことを察しても,水上さんは止まらない。

その勢いのまま私の前までやって来て,驚く私の手を取った。



「良かった~! 迷子かと思った! 真香はその内戻ってくるだろうけど……あ,私らのお昼は2階ね」

「う,うん。ありがとう」



2階,2階。

口ごもる私は,迷ったものの,そっと訊ねる。



「あの,真香さん……いないの?」

「え? あ,うん。でも真香ここ分かってるし,千夏探しに行っただけだから。ほらっ」



早くと促されて,私は部屋に入った。

ここまでずっと1本道だったのに,真香さんにはあってない。

迷子かもと,変な細い道等に入っちゃったのかもしれないし……

千夏くんだって……真香さんの前で何か言うことはないと思うけど……

色んな意味で,2人が心配になる。

私が,声だけかけて直ぐに戻らなかったから,他の人にまで迷惑をかけてしまった。

……あ。

私達が入った部屋には,色んなグループがいた。

その中で森くんと堀さんを見つけた私は,一緒になっていた数人を見て驚く。
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