溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
「なら,あたしらも好きに呼んで。そんでいいよね,美希」

「うん。その方が落ち着く」



と,扉の開く音がして,釣られた皆が顔を向ける。

呆然と私達を見た真香さんが立っていた。

顔を伏せた真香さん。

顔を振って上げたかと思えば,考えるように押し黙り……最後にパッと花開くような満面の笑みを浮かべた。



「美希達,言いたいこと言えた? だから大丈夫だって言ったでしょ? お昼先してて良かったのに……急いで食べよっか」



ーね,千夏。

真香さんが振り返った先には,影になった千夏くんがいて。

私は思わず,息を止めた。

気まずくて,恥ずかしくて。

顔をそらすのは失礼だと思いながらも,視線だけをさ迷わせた。

千夏くんが困ったような顔で笑って,どうしたらいいのか分からなくなる。



「真理~」



と真香さん。

私は助かったと,胸を撫で下ろし,何だろうと続きを待った。



「めんどくさいかもなんだけど,ちょっとこっち側に来て立ってくれない?」



申し訳なさそうな顔の真香さんに言われるまま,私は戸惑いつつも立ち上がる。

どうしたんだろうと視線のやり場に困っていると,真香さんは



「はいじゃあ両手広げて~」
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