溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
幼子の着替えの手伝いのように言われて,私は無防備に両手を広げた。
何の意味が?
と思う間もなく,たっと駆け出す真香さん。
「なっ何して……?」
戸惑う千夏くんも,今は視界の端に映るだけ。
あわわとしつつも,その一瞬は体勢変えちゃダメなのかもと迷う事で消費され……
私はガバッと真香さんに抱きつかれることとなった。
方の横に来た真香さんの頭に視線を向け,首には真香さんの両手の温もりを感じる。
私は驚きながら,開いた両手は真香さんを受け止めるためにあったのかと理解した。
でも……
「真香さん?」
私が声をかけると,真香さんはあははと笑う。
「なんか,思いっきり抱き締めたい気分でさ」
ズッと私だけに響く音。
鼻声……?
風邪を引いたのかと心配になる私は,取り敢えずそっと両手で返してみた。
恐る恐ると言った私の動きに,真香さんがおかしそうに笑う。
「はいっじゃあ,もーお腹すいた!」
「あははっ,じゃここに来なよ,空けるから」
それぞれが,3人分の席を空けてくれた。
ありがとうと眺めていると,ふと私に目をとめた真香さんが上目で私を見て。
「ちょーっとごめんね~?」
私の肩をポンポンと何度か叩いてから移動する。
……?
何か付いてたかな。
どこか挙動不審の真香さんに,私も続いた。