溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
何もない地元を離れ,隣の市まで。
凪のお金で電車に揺られる。
久しぶりだと改札を通ると,また懐かしさを感じる景色があった。
振り返ると,凪はまだ向こう側。
「お昼近いし,何か軽く食べるだけにする?」
「うん,いいよ」
目的の無い,デートと言う名前のお出掛け。
降りたばかりで,手を繋ぐことも無い。
ぷらぷらと歩くお散歩は,何か食べれるなら寧ろお得なくらいで。
私は何一つ不満のないまま頷いた。
「……アイスは?」
空をさ迷った凪の視線。
凪は思い付いたように私をみる。
「それか,キッチンカー見てから決める?」
私達は,近くにキッチンカーとその時間が書かれたカレンダーがあることを知っていた。
「ううん,アイス食べたい」
私は迷わず,アイスを選んだ。