溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。

なんか,どきどきする。

翌日の土曜日。
私は1人で自室を出た。

凪が来るより先に,意識して起きたからだ。



「「あ」」



戸建ならではの階段を下りると,丁度凪が階段を上ろうとしていた。

間に合って,よかった。

私はチラリと凪の顔を伺う。



「残念」



凪は目を細めて,本気半分,冗談半分みたいなトーンで言った。

良かった…

いつもと何も変わらない。

私はそれを確かめたくて早起きしたのかもしれなかった。

昨日の事は私達だけが知っていて,私はあの瞬間が,実はとても大切なことだったのではないかと思っていたから。

どうするべきだったのか,ずっと考えていた。

でも凪が笑ってくれるなら,それが答え。

私はどうしたって良かった。

それが私の逃げで,凪のやさしさ。

ーパタパタパタ




「凪くんよろしく」



階段を下りきると,いつもよりテンションの高いお母さんがじゃっと言うように出ていく。

よろしくって,何……
< 15 / 196 >

この作品をシェア

pagetop