溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
「……真理?」
顔をあげた真香が,目を真ん丸にする。
俯いているよりはずっといいと思ったけど,真理を今見つけたところでと空気を読まない自分を呪った。
「……いかないでって,言ったの憶えてる?」
「え」
いつの話だろって,変わった話に俺は考える。
直ぐに出てきたけど,俺は意味が分からなくて曖昧に返事をした。
カコ,と,歩く真理を横目で見ていた真香が固まる。
釣られて視線を戻した俺の耳に
「まっ」
と小さな声が届いた。
凪,さん……
真理を優しく見下ろして,2人は駅の方へ歩いていく。
「じゃ,なくて……え,と……と」
「うん,ありがとう」
俺が見ないようにって,止めようとしてくれて。
「~っっっもう! 違う!!!!」
違うって,何が……?
「私,千夏のこと,1っミリも応援なんかしてないから……!!!!」