溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
他人はそれでも幼馴染みだった。
初めての大喧嘩。
「あれ……あ母さん,アイス無くなった?」
凪のいない,土曜の昼。
お昼御飯を終えた後,私はソファーに座るお母さんに尋ねた。
数日前までは残っていたと思ったのに,今も冷気を放つその場所に,目当てのアイスが見つからない。
お母さんは私を一瞥して,またお昼のニュースに視線を戻す。
「昨日で最後だったの。もう11月も終わろうって言うのに,昼からアイスなんて……お金あげるから,食べたかったら自分で買って来なさい」
そして聞こえるパリッとした音。
お母さんが今指で摘まんでいるのは,2袋目のポテトチップスだと私は知っている。
お母さんだって……
そう言いかけるも,アイスを買うお金は欲しいのが正直な気持ち。
だから,私は机の上に置きっぱな財布を手に取るお母さんのもとに無言で寄った。
「お腹,壊しても知らないからね。変な人がいたら直ぐ逃げなさい」
「分かってるよ」
変なところで,過保護な人。