溺愛体質な彼は甘く外堀を埋める。
私はよく当たる勘の言うところにより,お母さんの背中に手を伸ばした。
ーバタン
無情にも,ドアは私の目の前で閉まり,ドアの先でお母さんが小走りする音が響く。
……
これ,は…
「凪!」
八つ当たりだ。こんなのは。
私はそれを分かって,その上で凪を涙目で睨んだ。
「行っちゃったね」
あははとでも言うように凪はあっけらかんと返す。
「っあれ! 絶対置いていかれたよっ私!」
また,だ。ひどい。次はって言ったのに。
ぜぇぜぇと息をして,あっと思う。
そして,取り繕うように両手を顔の前でクロスさせた。
何を取り乱して…私らしくもない。
子供っぽいと思われた?
私がクセみたいにして凪の顔色をうかがうと,凪は黙って私の頭を撫でる。
すっかり落ち着きを取り戻して大きな手のひらに身を委ねると,凪はふむ,と言った。
「真理は,猫みたいだね」
「そうかな」
「うん」
どんなところが? と思いながらも,凪はそれ以上言わなかったから私も聞かなかった。
それよりも,だ。